治療に手間のかかる体質らしい。奥歯から2本目の歯を治療した時には、親知らずでもないのに2時間も掛かって往生してしまった。麻酔の効いている歯自体は痛くはないのだが、開けっ放しの顎が痛くて拷問のようだった。おまけに同じ姿勢で寝続けて、腰痛もでた。普通は2本の歯根が4本に分かれていたのが、手間の掛かった原因だという。「隣の親知らずより長かったです」と医師に言われた。
宮内さんの面接の訓練として、伊豆松崎でカヤックの講習を受けた。山のリスクなら、僕も宮内もよく分かっている。彼女が、「自分がよく分からないリスクに対して、どう質問できるかを練習したい」という。このブログでも紹介するように、私たちの研究が一番お世話なるフィールドが、湖底の堆積物の掘削、つまりは水上での活動でもある。そこで、シーカヤックの講習を受け、それをインタビュー練習の素材にさせてもらうことにした。
親父がくも膜下出血で倒れて、新潟県小出の病院に入院してしばらくして、脳髄液がたまって手術が必要だという。昨今の医師は訴訟リスクを恐れてか、ポジティブなことをほとんど言ってくれず、話を聞くと気が滅入る。脳髄液を出さないと水頭症になるし、手術にはそれなりのリスクがあるという。水頭症になれば確実に死に近づくので、手術を受けないという選択肢はないのだが、究極の選択とはこのことだ。ベネフィットを追究すればリスクがあるということは、リスク研究をするものにとっては当然のことなのだが、それでも身内の命が掛かっていると考えると、そう簡単には割り切れない。それでも、所詮は人の命に対する判断だったのだと、今回思い知った。話は、健康診断の結果に遡る。
▲7月上旬に行われた隊員室開きに訪れた宮内さん(右)
もう10年以上前、朝日カルチャーの読図講習の講師を宮内佐季子さんと務めたことがあった。下見の時、僕たちは当然のように走っていた。自然公園のような場所からトレイルに入ろうとする時、整備されたトレイルには、木口レンガが敷き詰めてあった。その日、天気は良かったが、水はけがあまり良さそうに見えないその場所では、木口は黒ずんでいた。スリップに注意しなければならない。その区間に足を踏み入れた最初の着地の瞬間、僕は木口のフリクションを確認しようとした。僕がつま先を捻ったその瞬間に、隣を走っている彼女も足を捻ってフリクションの具合を確認しているのが見えた。