35. Happy Valentine!

写真はイメージです。*諸事情により現地からの写真はなし
写真はイメージです。*諸事情により現地からの写真はなし

  いまどき、チョコレートで愛を告白する女の子などいないだろうが、シャイな日本人にとっては、バレンタインデーは男女間のコミュニケーションを支えている。しらせの中でも、先任海曹室からバレンタインデーのイベントの告知が掲示された。艦長、副長の確認もある公文書「バレンタインイベント実施要領」である。実施は2月14日の夕食後から19:00まで。場所は科員(乗員)食堂。配給係の氏名が列挙されている。「チョコレート被配給対象者は乗員及び観測隊員」つまりは僕らもチョコレート(?)がもらえる!

 

 細部実施要領によれば、被配給者が好みの配給係からチョコレートを受け取る。しらせには10人強の女性自衛官が乗っているが、イベントでのチョコレート配給係は、2月上旬に掲示された「本当の自分をみつけたい人募集!」に応募した男性自衛官である。「配給係に失礼な言動を慎むこと」という注意事項も付記されている。

 

 当日の科員食堂は、キャバレー仕立てになっていた。いかにも夜の街にいそうなオレンジのはっぴを着た客引き姿の乗員が「本日一年ぶりに新装開店、大感謝祭実施中。あなたも気になるあの子が絶対見つかる!」と連呼している。「彼女たち」のクオリティーの高さに目を見張る。JK姿、セイラー服、メイド服、チャ イナドレスまで、ほぼ半日をかけて女装したとか。見事な女装振りは紹介したいところだが、残念ながら実施要領に従って写真の掲載を見合わせる。

 

 メイド姿の「女性」から袋をいただいた。10オングル(南極でのみ通用する仮想通貨。見た事がない)のオプションサービスのパンチラをお願いしたら、拒否された。そろそろ甘いものに飢え始めた船内生活にチョコレートは貴重品だが、船の生活に退屈しはじめた心の糧にもなった。

 

 しらせのバレンタインはこれだけに終わらなかった。昼前に58隊の女性隊員が部屋を訪ねて来て、チョコレートの入ったガラス瓶をくれた。58次のロゴが入ったラベルには驚かなかったが、ビンの底ラベルを見て、その芸の細かさに感服した。「JARE58特性バレンタインチョコレート、原材料名:愛情、感謝、砂糖、牛乳・・・、内容量は愛情詰め合わせ、適量」とある。ラベルは手間ではあって

も、越冬隊なら作るくらいの時間はあるだろう。チョコレートも越冬隊の「デブ倉庫」にあったかもしれない。だが、60個を越える小瓶はまさか201611月に用意してあったのか!?

 

 午後には、今度は59次の女性がチョコレートを持ってきてくれた。こちらは紙製の雪上車の模型の中にブラックサンダーが入っている。ブラックサンダーの包装紙は59特製だ。しらせに乗ったらこんなものは用意できないので、やはり昨年11月以前に準備したものなのか!?

 

 彼女たちの気合に脱帽。