静岡外からきた学生は、「在学中に一度は富士山」と思って富士登山に出かける者が結構いる。それに気づいて、夏休み前の体育の授業では、登山のリスクについて考えさせる授業をする。
今年の授業に先立った2010年の夏の富士山の遭難データを集計してみた。驚くべき発見はなかったが、いくつか気づいた点は、富士登山の遭難防止にも役立つかもしれないので、まとめておく。
まず遭難態様をみて驚いたのは、意外に道迷いが多い点である。全国の夏以外の傾向から見れば少ないが、それでも20%強だ。あんな山のどこで迷うのだろうと思うが、そうでもないらしい。元データにあたってみると、ほとんど9件のうち7件が8月13日に発生。原因は悪天候のようだ。
転倒は夏山遭難の代表的態様だが、約1/4を占める。好発年代は一般的には60歳代だが、富士山の特徴は10歳代から70歳代まで幅広い層に見られることだ。もちろん年齢が上がるとバランス感覚は悪くなるが、それ以上に「普段山歩きをしていない」人が岩がちの悪路を歩く結果なのだろう。そういう人の登山が増える夏には注意したいところだ。
疲労と病気は合わせて半分を占める。疲労のほとんどは体力不足。これは登山者の実態を考えると頷ける。一方病気は高山病が2/3で残りが熱中症。しかし、低体温症による死亡事例もある。これは8/12日に発生している。アメダスのデータをみると、山頂の気温が特に低かったわけではない(しかし最高気温は概ね12度程度であることに注意)が、麓の白糸では相当量の雨が降っている(山頂の天気データはない)。天候は重要な要因なのだろう。
遭難の原因を見ると、悪天候に並び、体力不足と装備不備が目立つ。不慣れな登山者が多いことが見て取れる。
(注:静岡県では近年夏の富士登山は「観光」扱いしているが、上記の資料は全て登山と見なして7-9月の遭難全50件について分析した。