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23年山岳遭難統計を見て

 6月21日に、恒例の前年の山岳遭難統計が警察庁から公表された。それによれば、ここ数年増加の一途だった山岳遭難は192人の減少となり、2204名となった。22年の遭難の増加が極端だったので、減ったというよりも妥当な増加幅に戻ったというべきなのかもしれない。

 

 遭難数の減少は山岳関係者としては喜ばしいが、手放しで喜べるものでもない。22年の遭難数と比較してみると、東京で74名、埼玉で52名という大幅な減少が見られたものの、減少数の多くは、岩手、山形、福島、秋田に集中し、この4県で101名。目的別の減少を見ると、登山目的で81名の減少を見ているが、山菜採りでの減少が102名だ。もともと登山と山菜採りの遭難数の比は概ね73:17で、圧倒的に登山が多いのだ。山菜採りによる遭難の比率が元々東北に多かったことを考えると、この減少のかなりの部分は東北での山菜採り、そして若干の東北での登山の減少によると考えられる。遭難数減少の半分は東日本大震災と福島原発の事故に由来していると考えてよい。決して意図的な努力が実った成果とは言えないだろう。

 

 東京と埼玉の100名以上の減少はどうだろう。首都圏の登山動向を肌で感じていないので、確たる要因は分からない。北関東から埼玉にかけての山間部は平地に比較して放射線量が高いというデータも公表されているので、それに影響を受けたのかもしれない。高尾山で山デビューするような人たちが一段落したのかもしれない。しかし比較的遭難の多い西日本では、三重で46→55と増加、滋賀で46→69と増加、京都で20→23と増加、兵庫で118→100と減少、奈良で29→44と増加と概ね増加傾向を示していることを考えると、震災(あるいは放射能)の影響による「登山控え」が最大要因というのが最も妥当な解釈に思える。

 

 遭難減少の取り組みに関わって10年近くが経つ。一度はこの目で「この結果は間違いなく(事前の)遭難対策に由来している!」と思えるデータを見てみたいものだ。