教育関係者必読の書:子どもの命はまもられたのか(数見隆生)

31:数見隆生 (2011) 子どもの命は守られたのか:東日本大震災と学校防災の教訓 かもがわ出版

 

 新聞は悲劇ばかりを大きく報道するが、東日本大震災では、学校管理下ので児童・生徒の死亡率は住民の死亡率を大きく下回る。この本を読めば、それが決して「釜石の奇跡」なのではなく、三陸沿岸部の必然であったことが分かる。「守られたか?」というタイトルは多くの場合修辞的なものだが、この事実は教育関係者が誇りに感じていい成果だ。一方、「大川の悲劇」も、大川だけの問題としてでなく、こういう広い文脈の中において、多くの場で学校が子どもを守れたのに、なぜという視点でとわなければならない。

 

 読み終わった翌日、大学院の授業で、静岡の防災教育や学校での災害後の対応についての研究発表を聞いた。脳天気さに愕然とした。「原則留め置き」の内容すら正確には教職員に行き渡っていないのだ。これでは同じ、いや三陸以上の惨事に遭遇してしまう。