仕事柄、学校の養護教員から相談や研修の講師を依頼されることが多い。昨今、学校(というよりも社会全体か?)の安全意識が高まり、児童・生徒の安全確保は学校の火急の課題となっている。その一方で、発達段階途上の児童・生徒、体育や遠足のようなハザードに満ちた環境の中での活動など、学校の環境は安全という点でははなはだ心許ない環境でもある。児童のけがや疾病を最前線で見ている彼らは、時に安全意識の低い教員に対してのいらだちを感じることもあるそうだ。研修の相談に来た養護教員の代表から、そんな話しを伺った。
昨年から今年にかけておつきあいした小笠地区の養護教員の研究会は、その意識を元に管理職から学校教員全体までを巻き込んで、事故やけがの対応だけでなく、その予防まで幅広く取り組んだ希有な例である。しかし、全体としては彼らの心配の種はなかなか解消しない。研修会に向けていただいた「質問」のいずれも答えることが難しいものばかりだ。知識がその一つの解決手段になることは間違いないが、それだけでも不十分だろう。リスクに対する原理的なスタンス(一種の哲学)の確立が教育界全体としても必要なのだろう。